さき一種のろうそく江戸山谷の仰願寺にて用いはじめしより云う」]《こうがんじ》をくれろと仰しゃるんですか、えへゝ仰願寺なら蝋燭屋《ろうそくや》へお出《いで》なさらないじゃアございませぬよ」
 梅「いえあのお寺でございますがね」
 爺「何《なん》ですいお螻《けら》の虫ですと」
 梅「いゝえ長安寺というお寺へ参るのでございますが」
 すると小暗い所にいた一人の男が口を出して、
 男「えゝ、もし/\お嬢さん、その長安寺というのは私《わっち》が能く知ってますよ」
 と云いながらずっと出た男の姿《なり》を見ると、紋羽《もんぱ》の綿頭巾を被《かむ》り、裾短《すそみじか》な筒袖《つゝそで》を着《ちゃく》し、白木《しろき》の二重廻《ふたえまわ》りの三尺《さんじゃく》を締め、盲縞《めくらじま》の股引腹掛と云う風体《ふうてい》。
 男「まア御免なさい、私《わっち》アこんな形姿《なり》をしてえますが、その長安寺の門番でげす」
 梅「おや/\、それじゃア貴方《あなた》にお聞きをしたら分りましょうが、あの粂之助はやっぱり和尚様のお側に居りますか」
 男「えゝ、粂之助さんは、おいででござえます、あなたは何《なん》ぞ
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