て居《お》る。汝《おのれ》が取次をするから此の様な間違が出来《でけ》たのや、サ是を御覧、此の手紙が何よりの証拠や、私《わたい》はお前に逢いとうて逢いとうてならぬから、家出をしてお前の処《とこ》へ行《ゆ》く、何卒《どうぞ》末長く見捨てずに置いておくれと書いてあるやないか、是が何よりの証拠や」
鳶「証拠だッて、そんな事は私《わっし》ア知りやアしねえ」
番「知りやせぬと云うてまアよく考えて見なはれ、当家《うち》のお内儀様《いえはん》はこないに諦めの宜《え》えお方やから、涙一滴|澪《こぼ》さぬが、鳶頭が仲へ這入って口を利き、もう甲州屋の家《うち》へは足踏をさせぬと云い切って引取ったのやないか、それじゃのに、又|此処《こゝ》へ粂之助が忍んで来て、お嬢|様《さん》を誘い出すような事になったのは、大方鳶頭も内々《ない/\》知って居《お》るのではないか、粂之助と共謀《ぐる》になってお嬢様を誘い出し、金額《かね》を半分ぐらい取ったのではないかアと思われても是非がないやないか」
云うと怒《おこ》ったの怒らないの、もと正直な人だから、額へ青筋を出して、
鳶「何を吐《ぬか》しやアがるんでえ、撲《なぐ》り付けるぞ、コレ頭を禿《はげ》らかしやアがって馬鹿も休み休み云え、粂どんが人を殺して金を取る様な人か人でねえか大概《てえげえ》解りそうなもんだ、手前《てめえ》の心に識別ウするから其様《そんな》事を吐《ぬか》すんだ、己が半分取ったたア何だ、撲り付けるぞ」
番「打《ぶ》たいでも宜《え》え、私《あたい》は理の当然をいうのや、お嬢|様《さま》を殺して金子《かね》を取ったという訳じゃないが、然《そ》う思われても是非がないと云うのや」
鳶「何が是非がないんだ、撲倒《はりたお》すぞ」
清「まア/\少し待っておくれ」
と云いながら台所より出て来たは清助というお飯炊《まんまたき》。
清「鳶頭まア/\貴方《あんた》は正直な方だから、こんな事を云われたら、嘸《さぞ》はア胆《きも》が焦《い》れて堪《たま》るめえが、己が一と通りいわねばなんねえ事があるだアから、少し待ったが宜《え》え――コレ番頭さん、此処《こゝ》へ出ろ」
番「何じゃ、汝《おのれ》が出る幕じゃアない、汝は飯炊《めしたき》だから台所に引込《ひっこ》んで、飯の焦《こげ》ぬように気を附けて居《お》れ、此様《こない》な事に口出しをせぬでも宜《
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