つて置くのを見て、これは贋《にせ》でございますとも謂《い》へんから、あゝ結構《けつこう》なお道具《だうぐ》だと誉《ほ》めなければならん、それが厭《いや》だから己《おれ》の代《かは》りに彼《あ》の弥吉《やきち》の馬鹿野郎《ばかやらう》を遣《や》つて、一|度《ど》でこり/\するやうにしてやらう。女房「お止《よ》し遊ばせよ、あなたは彼《あれ》を怜悧《りこう》と思召《おぼしめ》して目を掛《か》けていらツしやいますが、今朝《けさ》も合羽屋《かつぱや》の乳母《おんば》さんが店でお坊《ばう》さんを遊ばして居《ゐ》る傍《そば》で、弥吉《やきち》が自分の踵《かゝと》の皮を剥《む》いて喰《た》べさせたりして、お気の毒な、子供衆《こどもしゆ》だもんですから、何《なに》も知らずむしや/\喰《た》べて居《ゐ》ましたが、本当に汚《きたな》い事をするぢやア有《あ》りませんか、それに此頃《このごろ》では生意気《なまいき》になつて、大人《おとな》に腹を立たせますよ。長「いや、馬鹿《ばか》と鋏《はさみ》は使ひやうだ、お前《まへ》は嫌《きら》ひだが、己《おれ》は嗜《すき》だ……弥吉《やきち》や何処《どこ》へ往《い》つた、弥吉《やきち》イ。弥「えゝー。長「フヽヽ返事が面白《おもしろ》いな……さ此方《こつち》へ来《こ》い。弥「えゝー。長「何《なん》だ大きな体躯《なり》をして立つてる奴《やつ》が有《あ》るか、坐《すわ》んなよ。弥「用が有るなら直《ぢき》に往《い》つて来《く》るにやア立つてる方《はう》が早《はえ》えや。長「馬鹿《ばか》だな、苟且《かり》にも主人《しゆじん》が呼んだら、何《なに》か御用《ごよう》でも有《あ》りますかと手を突いて云《い》ふもんだ、チヨツ(舌打《したう》ち)大きな体躯《なり》で、汚《きたね》え手の垢《あか》を手の掌《ひら》でぐる/\揉《も》んで出せば何《ど》の位《くらゐ》の手柄《てがら》になる、物《もの》を積《つも》つて考へて見ろ、それに此頃《このごろ》は生意気《なまいき》になつて大分《だいぶ》大人《おとな》にからかふてえが、宜《よ》くないぞ、源蔵《げんぞう》見《み》たやうな堅《かた》い人を怒《おこ》らせるぢやアねえぞ。弥「なに彼《あ》の人《ひと》はね疝気《せんき》が起《おこ》つていけないツてえから、私《わたし》がアノそれは薬を飲んだつて無益《むだ》でございます、仰向《あふむ》けに寐《
前へ 次へ
全11ページ中2ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
三遊亭 円朝 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング