だ負惜しみという奴があって、おのれ生意気な画板め、余計な角を持《もっ》て来やがって、よくも乃公《おれ》に赤恥をかかせやがったな。どうするか覚えていろと、果《はて》わ悔《くや》しまぎれに良くない了簡《りょうけん》を起しました。
で、そのまま帰ると、直ぐに近所の鋏《はさみ》の処《ところ》え参り、
[#ここから改行天付き、折り返して1字下げ]
(三)鋏君、申兼《もうしかね》たが今夜一ト晩、君の体を貸してくれまいか。
[#ここで字下げ終わり]
鋏わこれを聞いて、
[#ここから改行天付き、折り返して1字下げ]
(鋏)なるほど、次第によってわ貸すまいものでもないが、一体何を切るのだ。
(三)ちっと硬《かた》いものを切りたいのだが、よく切れるかイ。
(鋏)大抵なものなら切《きっ》て見せるが、それでも六《むず》かしいと思うならまア一遍|磨《と》いで行くさ。
(三)そうか、そんなら磨がしてくれたまえ。痛かろうけども頼まれたが因果だ、ちっとの間辛抱頼む。
[#ここで字下げ終わり]
と、これから三角定木わ、件《くだ》んの鋏をば磨ぎ立てまして、もうこれならば大丈夫と、その日の暮れるのを、今か今かと待ちかま
前へ
次へ
全6ページ中3ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
巌谷 小波 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング