る以前に日本には事實に於て自由貿易はあつたのです。今申上げたやうに、商賣が總て座の專有物になつて、特許を經たる商人でなければ商賣が出來ないと云ふことになつて、流弊甚だしく、京都大津の座の商人は、京都から伊勢へ至る道路を悉く座の商人に取つてしまつた。座の商人の仲間でなければ商品を持つて其處を通過することはならぬ。又座に屬して居らぬ商人があるから、それを通したい場合には、税を納めて荷物を通すと云ふことにして、座が天下を占領してしまつた。日本全國到る處座の組織が立派に成立つて來たのです。其弊害が餘り甚だしいので、座以外の商人が非常に苦痛を訴へ、商賣は自由にして貰ひたいと云ふ聲を出して來たのです。自由貿易とか、政治上の自由とか哲學で申しますが、是では商賣が出來ないから自由に商賣さして呉れと云ふ聲を代表したのは織田信長でありまして、織田信長は唯比叡山を燒討したとか、明智光秀に殘酷なことをしたとか云ふやうなことだけ傳はつて居るが、立派な政治家で、座が天下を專有することは善くない、商人が自由に商賣することは尤もであるから座を禁止してしまへと云ふので、信長の政權の到る處座を皆廢してしまつた。秀吉は信長
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