來、國民が一日も忘るゝ能はざりし一大目的也。一千二百年の雄志初めて酬ゆるの日に方つて、我國民が歡呼、欣舞するものまた偶然にあらず。唯だそれ情炎、燃るの日も、吾人は冷頭靜思せざるべからず。所謂る朝鮮に於ける吾人の勝利なるものは、唯だ清國に對する勝利、武力の勝利のみ。朝鮮は依然たる獨立國にして、其の自主自由の權あるや、前日と一毫の差なきを記臆せざるべからず。吾人は朝鮮に於ける[#「吾人は朝鮮に於ける」に白丸傍点]『勢力[#「勢力」に白丸傍点]』を得たるのみ[#「を得たるのみ」に白丸傍点]、未だ朝鮮を我屬國としたるものにあらず[#「未だ朝鮮を我屬國としたるものにあらず」に白丸傍点]。若し或は已に勢力を得たるが爲に、朝鮮は、凡べての事に於て、我が思ふが如く成るべしと爲さば、是れ妄信の甚しきもの也。若し一個[#「若し一個」に白丸傍点]、列國權力の平衡を知り[#「列國權力の平衡を知り」に白丸傍点]、列國嫉妬の情僞を知り[#「列國嫉妬の情僞を知り」に白丸傍点]、空拳を揮つて列國を掌上に弄せんとするマキヤベーリ的の政治家あらば[#「空拳を揮つて列國を掌上に弄せんとするマキヤベーリ的の政治家あらば」に白
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