し、そんなことをなさらずとももっといい事がありますが、その方になすっちゃどうです」
 と、又ニコニコしながら云いました。
 豚吉は無茶先生から治してもらうよりももっといい事があると聞いて喜びまして、
「それはどんなことをするのですか」
 と尋ねました。動物園の主人はエヘンと咳払いをしまして、
「それはこうです。あなた方は世にも珍らしいお身体《からだ》をしておいでになるので、又そんなお身体《からだ》に生れて来ようと思ってもできる事ではありません。それを治してしまうのは惜いことです。それよりも一層《いっそ》のこと、私に雇われて下さいませんか。そうすればお金はこちらからいくらでもあげます。あなた方が二人、私のところに居らるれば、毎日見物人が一パイで、私は山のようにお金を儲けることが出来ます。どうぞあなた方御夫婦で見世物になって下さいませんか」
 とまじめ腐って云いました。
 豚吉はこれを聞くと、今までニコニコしていたのに急に憤《おこ》り出しまして、大きな声で動物園の主人を怒鳴りつけました。
「この馬鹿野郎、飛んでもないことを云う。おれたちはまだ見世物になるようなわるいことをしていない。貴様は
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