出て入り口の番人にこの動物園の主人に会わしてくれまいかと頼みますと、その番人はニコニコしながら、
「私が主人です」
と云いました。
「ヤア。それは有り難い。それなら一つ、私達夫婦からお願いしたいことがあるがきいてくれないか」
と豚吉もニコニコして云いました。すると主人は又一層ニコニコしまして、二人の顔を見ながら、
「それならば私からもお願いしたいことがあります。しかし、ここでは忙しくてお話が出来ませんから、こちらへお出でなさい」
と、夫婦を自分達の宿屋へ連れてゆきました。
動物園の主人は宿屋へ来ますと、夫婦にお茶やお菓子を出してもてなしながら、
「あなた方のお頼みとはどんなことですか」
とききました。夫婦は代る代るに、自分達が世にも珍らしい片輪であることから、無茶先生のところへ来て治してもらおうと思ったこと、そうしたら無茶先生が鹿と猪を買って来いと言われたことまで話しまして、
「済まないが、お金はいくらでもあげるから、あなたの処に居る猪と鹿を私達に売ってくれまいか」
と頼みました。
動物園の主人はこれをききまして、
「それはお易いことです。今日でも売ってあげましょう。しか
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