したくなりましたが、きょうは大切な用事で来たのですから逃げる訳に行きません。一生懸命で人を押しわけながら先ず神様へ参りまして、二人とも手を合わせて、
「どうぞ私どもの身体《からだ》が当り前の人のように恰好《かっこう》よくなりますように」
 とお祈りを上げまして、それからお宮のうしろの見世物の処へ来ますと、そこは前よりも一層賑やかで、音楽隊の音や見物を呼ぶ声が耳も潰れるようです。
 夫婦はビックリして立止まって見ておりましたが、そのうちに向うの方に獣《けもの》の絵看板を沢山に並べた一軒の見世物小舎が見つかりました。
 豚吉とヒョロ子夫婦はその動物の見世物小屋の方へ行きますと、夫婦の珍らしい姿を見に集まったものがあとから黒山のようについて来ます。それを構わずに夫婦はやがてその見世物小屋の前に来て、お金を払って中に這入りますと、あとからついて来た黒山のように沢山の人間も、夫婦の珍らしい姿が見たさにわれもわれもとお金を払って中に這入りましたので、大きな見世物小屋が一パイになりました。
 二人は中に這入って見ますと、象やライオンや大蛇や虎の中にまじって、猪や鹿もおりましたので大喜びしまして、表に
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