場の主人は又押し止《とど》めて、
「ちょっと待って下さい」
と云いました。
「この町から一里ばかり離れたところの村に神様があって、きょうがちょうどお祭りの筈です。そこには毎年いろんな見世物が来ますが、その中には獣《けもの》の見世物もあって、その中に猪や鹿も居る筈です。今年は来ているかどうかわかりませんが、行って御覧なさい。もしその見世物が居たら、お金さえ沢山出せば、ライオンでも象でも売ってくれるに違いないと思います。いっその事、あなた方は思い切ってライオンや象を買って、その骨を入れたら大きくて丈夫でよくはありませんか」
と又笑い出しました。
二人は腹が立ちましたけれども、折角いい事を教えてくれたのですから、御礼を云ってここを出まして、それから二人連れでエッチラオッチラ一里ばかり歩いてその村に来ますと、成る程、村中は大変な騒ぎで、今が祭りの最中です。
その中へ世にも珍らしい姿の夫婦がやって来たものですから、サア大変です。
「ヤア。見世物みたような珍らしい夫婦が来た」
というので、ワイワイワイワイ押しかけて来て、夫婦は歩くことも出来ません。
豚吉もヒョロ子も恥かしくなって逃げ出
前へ
次へ
全118ページ中30ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
三鳥山人 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング