もう、ルルの顔をあおぎながら、その音《ね》が聞こえるようにため息をしました。ルルも一所にため息をしました。
「ミミや。そうしてあの鐘が鳴ったなら、村の人はきっと私たちを可愛がって、二度と再び湖の底へはゆけないようにしてしまうだろうねえ」
「まあ。お兄様はそれじゃ、湖の底へお帰りになりたいと思っていらっしゃるの……」
ルルはうなずいて、又一つため息をしました。そうして又も涙をハラハラと落しました。
「ああ。ミミや。わたしはあの鐘の音《ね》をきくのが急に怖くなった。村の人に可愛がられて、湖の底へ又行くことが出来なくなるだろうと思うと、悲しくて悲しくてたまらなくなった。私は湖の御殿へ帰りたくて帰りたくてたまらなくなったのだ。私は死ぬまであそこの噴水の番がしていたくなったのだ」
「それならお兄様……あの鐘の音《ね》はもうお聴きにならなくてもいいのですか……お兄様……ききたいとはお思いにならないのですか」
「ああ。そうなんだよ、ミミ……だから、お前は私の代りにも一度一人で村へ帰って、あの鐘を撞いてくれるように村の人に頼んでくれないか。あの鐘はルルの作り損いではありませんと云ってね。それから兄さ
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