二人をソッと抱き上げて、海月の上にお乗せになりました。
「海月よ。お前は絶えず光りながら、この兄妹《きょうだい》を水の上まで送り届けよ。そうして、悪い魚が近付かないように毒の針を用意して行けよ」
 海月は黙って浮き上りました。
 咲き揃った水藻《みずも》の花は二人の足もとを後《うしろ》へ後へとなびいてゆきました。御殿の屋根は薔薇色に、または真珠色に輝きながら、水の底の方へ小さく小さくなってゆきました。宝石をちりばめたような海月の足の下へ……。
「ネエ、ルル兄さま!」
「ナアニ……ミミ」
「女王様は何だかお母様のようじゃなかって」
「ああ、僕もそう思ったよ」
「あたし、何だかおわかれするのが悲しかったわ」
「ああ、僕もミミと二人きりで湖の底にいたいような気もちがしたよ」
 こんなことを二人は話し合いました。そうして二人は抱き合って、海月の足の下をのぞきながら、何遍も何遍も女王様のいらっしゃる方へ「左様なら」を送りました。
 ルルとミミが湖のおもてに浮き上ったところには、美しい一艘の船が用意してありました。その上にルルとミミは乗りうつりました。
「海月よ。ありがとうよ。ルルとミミが心から御
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