い風格を備えたシャンとした姿勢であった。肩が張って、肋骨が出て、皺《しわ》だらけの長大な両足の甲に真白い大きな坐胝《すわりだこ》がカジリ附いていた。
冬は地味な、粗末な綿入の上に渋茶色のチャンチャンコ、茶色の小倉帯、紺飛白《こんがすり》の手縫足袋。客が来るとその上からコオリ山(灰白色の紬《つむぎ》の一種)の羽織を羽織った。
麻製渋色の胸当て(金太郎式の)は夏冬共に離さなかった。
◇
後頭部に心持ち黄色い白毛が半月型に残っているのを綺麗に櫛目を入れていた。顔は長大で、鼻が西洋人みたように鷲型で、白い眉が房々として、高い小鼻の左右に眼窩が深く落凹《おちくぼ》んで、心持ち内斜視の老眼が鋭く光っていた。口は大きく一文字に閉じて、凹んだ両眼と、巨大な顎と共に一歩も退かぬ一徹の気象をあらわしていた。
横頬から特に前頭部へかけて黒い斑《まだら》の長生※[#「やまいだれ+徴」、第3水準1−88−60]《ちょうせいちょう》が群着していた。又首筋へ労働者でなければ見受けられない深い皺が重なり合っていたが、これは翁自身の過激な肉体的習練の結果か、又は好物の畠イジリと網打ちの結
前へ
次へ
全142ページ中88ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
杉山 萠円 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング