。次の頁は只の白紙《しらかみ》で、一字も文字が書いて無いではないか。これは不思議……今まであった話が途中で切れる筈《はず》はないと思いながら、慌てて次の頁を開いたがここも白紙《はくし》で何も書いて無い。その次その次とお終い迄バラバラ繰り拡げて見たが矢張《やっぱ》り同じ事。真逆《まさか》白髪小僧と自分の身の上が、これでおしまいになった訳ではあるまいと、美留女姫は胸が張り裂ける程驚き慌てて、今度は前の方を引っくりかえして見ると又驚いた。今まであんなに書き続けてあった文字が一字も無く、この書物は全くの白紙《しらかみ》の帳面と同じ事になっていた。
 美留女姫はあまりの事に驚き呆《あき》れて思わず書物から眼を離すと又不思議、今までたしかに大広間の中で大勢の人に取りまかれて、書物を読んでいた筈なのに、今見まわせばそんなものは、書物の文字や挿《さ》し絵《え》と一所に、どこかへ綺麗《きれい》に消え失せてしまって、自分は矢張り最前の銀杏《いちょう》の根本に、書物を持ったままぼんやりと突立っているのであった。しかも眼の前の最前書物の置いてあった銀杏の樹の根本には、いつの間にどこから来たか、白髪小僧が腰をか
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