どうなる事だろうと、先から先へと頁を繰りながら、家《うち》の方へ歩いているうちに、一足|宛《ずつ》川岸の石崖の上に近づいて来た。折からそこを通りかかった二三人の人々はこの様子を見て胆《きも》を潰《つぶ》し――
「危いッ、お嬢様危い。ソラ落ちる」
と大声揚げて駈け附けた。
併《しか》し姫は書物に気を取られていたから人々の叫び声も何も耳に入らなかった。
矢張《やっぱ》り平地《ひらち》を歩いているつもりで片足を石垣の外に踏み出すや否や、アッと云う間もなく水煙《みずけむり》を立てて落ち込んでドンドン川下へ流れて行った。
けれども仕合わせと白髪小僧の御蔭《おかげ》で危い命を拾ったが、これが縁となって美留女姫は白髪小僧を吾《わ》が家《や》へ連れて来て、両親を初め皆の者に白髪小僧と自分との身の上に起った、今までの不思議な出来事を読んで聞かせると、皆心から驚いて、一体これはその書物に書いてあるお話しか、それとも本当に二人の身の上に起った事かと疑った。そうして今の話で、この間赤い鸚鵡が云った一番|長生《ながいき》の白髪頭の奇妙な姿をした老人というのはお爺さんでもお婆さんでも何でもなく、この白髪小
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