んでしまいたい。
 噫。藍丸の国の秘密は灰になった。美紅姫の心の秘密は氷になった。紅矢の拳固の秘密は鉄になった。私の役目の秘密は何になるであろうか。石か。木か。水か。土か。何でもよい。早く青い眼、青い髪の男に出会って、この秘密を譲って、この恐ろしい役目を忘れたい」
 青眼先生の独り言の中《うち》には次第に不思議な言葉が、いくつもいくつも出て来ました。けれどもここまで云って来ました時、青眼先生は唇を閉じてじっと窓の外の遠い処を見ました。そこには絵のように美しい藍丸王の宮殿が見えて、そこから又もや最前よりもずっと賑《にぎ》やかな音楽の響が聞こえて来ました。これはいよいよお目見得の式がはじまるという前兆《まえし》らせでした。

     二十 海の女王

 この日御目見得に来た女は都合六人ありました。その内四人は、東西南北の四ツの国から、一人|宛《ずつ》選《よ》り抜かれて集まった女で、皆|各自《めいめい》の国の自慢の冬の風俗をしておりました。北の国の女は、美事な獺《かわうそ》の皮の外套を着ておりました。南の国の女は、水鳥の毛で織った上衣を着ておりました。東の国の女は、空色の絹の裾を長く引いて
前へ 次へ
全222ページ中171ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
杉山 萠円 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング