しい悪魔で、誰でもその悪魔の名前だけでも聞くと直ぐに悪魔に乗り移られて、自分が悪魔になってしまうので御座います。ですからその名前は申し上げられませぬ」
「では貴方はその名をどうして御存じですか」
 紅木公爵夫人がこう尋ねますと、青眼先生はグッと行《ゆ》き詰《つ》まりました。そうしてさも苦しそうに返事をしました――
「それは私だけはその名前を聞きましても、又その姿を見ましても何ともないので御座います」
「まあ。不思議ですね。何か悪魔に乗り移られないいい工夫でも御座いますのですか」
「ハイ。それはあります。けれどもそれは私の家の先祖代々の秘密で、今申し上げる事は出来ませぬ。私の家は代々この秘密を守って、そして彼《か》の昔からの掟――人の姿を盗む者。人の声を盗むもの。人の生血《いきち》を盗む者。この三ツは悪魔である。見当り次第に打ち殺せ。打ち壊せ――という言葉を国中に広く伝えるのが役目で御座います」
「そうだそうだ。皆そんな掟が在ったという事を聞いた。それで思い出した。今美紅の姿を盗んでいる奴は悪魔に違いない。何卒《どうぞ》青眼先生、是非その悪魔を退治て下さい。貴方は病気の事ばかりでなく悪魔
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