父様……お母様……妹共……危い危い。私の傍に居ると危い。悪魔は娘の美紅に化けている。そうしてあの悪魔の乗り移った『瞬』に乗って今にもこの窓から駈け込んで来たら……危い危い。出て行って下さい。妹共、出て行け。一人も私の傍へ居ちゃいけない。早く早く」
 と叫ぶかと思うと、又ガックリと枕に頭をのせて、うとうと睡《ねむ》ってしまいました。こんな事が夜通しに二三度もありましたが、傍に居る人々は何の事やら訳が解からずに、唯《ただ》驚き慌てるばかりでした。そうして何は兎《と》もあれ用心のために、お母様や妹共をこの室《へや》から遠ざけまして、お父さんとその他にも一人、気の強い、力も強い家来の黒牛《くろうし》という者と二人で枕元に居る事にしまして、一方は、廏屋《うまや》の馬丁《べっとう》に申しつけて、『瞬』を厳重に柱に縛り付けて動かぬようにして、その上に番人を二人までもつけておきました。
 翌る朝になりますとまだ薄暗いうちに、青眼先生が見舞いに来ました。紅矢の両親や家《うち》の人々はもう昨夜《ゆうべ》から心配に心配を重ねて、夜通しまんじりともせずに先生が来るのを待ちかねていたところでしたから、先生の顔を
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