薬の利き目とで呼吸《いき》を吹き返して、スヤスヤと静かに眠っていました。
 これを見ると両親は、又もや一人小供が生れたように喜んで、嬉《うれ》し泣きに泣きました。そうして今更に青眼先生の介抱の上手なのに感心をしまして、紅矢のみならず私共の生命《いのち》の親と云って深く深く御礼を申しました。

     十七 銅の壺

 紅矢はその夜家の者に担《かつ》がれて、自分の家に連れて行かれましたが、大層熱が高くて平生《いつも》の自分の寝床に寝かされても、まだ夢中でうんうん唸《うな》っておりました。そうしてその夜は夜通し囈言《うわごと》ばかり云っていましたが、時々眼を開いて両親や妹共の顔を見るかと思うと、忽ち狂気のように騒ぎ出しまして――
「この室《へや》へ這入っちゃいけない……お父様も……お母様も妹共も……家来共も皆いけない。聞け……聞け……私は悪魔に咀《のろ》われている。悪魔の果物。悪魔の美紅。そうして悪魔の『瞬』……七ツの果物は悪魔の数《すう》であった。……私は七ツの数《すう》に咀われた。悪魔の美紅に欺された。悪魔の『瞬』に踏み蹂《にじ》られた。吁《ああ》恐ろしい。……嗚呼《ああ》苦しい。お
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