きました。
 最前から青眼先生の家へは、紅矢の家から引っ切りなしに使いが来て、紅矢はまだ来ぬかまだ来ぬかと尋ねていました。そのお使いから詳しい様子を聞いて、青眼先生はどうしたことであろうと立っても居てもおられず心配をしているところへ、不意に表の門の前で馬の嘶《いなな》き声が聞こえましたから、もしやと思って駈け出して見ますと、こは如何に、紅矢は銀杏の樹の根元に血まぶれになって倒れていて、傍には「瞬」が心配そうにうろうろしています。
 青眼はこの有様を見て、腰を抜かさんばかりに驚きましたが、兎《と》も角《かく》も紅矢の家から使いに来たものに頼んで、二人で紅矢を自分の寝台《ねだい》に運び入れて、すっかり裸体《はだか》にして血を拭い清めて、傷口を調べて見ますと、案外に傷は浅くて、ここ一週間も経ったら癒《なお》りそうです。只胸と頭を非道《ひど》く打ったと見えまして、全く気絶して呼吸も通わず、脈も打たず、身体《からだ》は氷のように冷たくなって、唇は紫色になっていました。けれどもお使いの者が「瞬」に乗って帰って、取るものも取り敢えず紅矢の両親を連れて来ました時には、紅矢は青眼先生の上手な介抱と、良い
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