って存在していた或る二つの勢力、二百名の新生会員と百名の大成会員が大々的の暗中飛躍を試みた。新生会の方は千束町の撲滅に対して正面から反対して、飽く迄も昔の千束町を復活させてもらうべく運動をした。これに対して大成会の方は早く見切りをつけて、代りに券番の許可を出願した。そうしてその又裡面には、魔窟の中を横行していた公園ゴロが必死の活動を試みた。大和民労会の五六十名、河井徳三郎や高橋金次郎の乾児《こぶん》なぞが血眼になったという面白い来歴があるが、古い話だからここには略する。
こうしたヤッサモッサに対して、その筋は断乎たる方針を取った。そうして大成会の券番設置運動に対して最後の栄冠を与えた。この当局の措置に対しては、怪《け》しかるとか怪《け》しからぬとかいろんな噂もあるが、要するにその筋では最穏健な措置を取ったつもりらしい。
一円五十銭から七八円の女を求むる者が大多数
この浅草の大券番設置出願の本当の理由は、今までの千束町の女を利用する目的でなかった。各地から新しい職業婦人を輸入して、千束町に代るべき頽廃気分を作るためであった。又、そうでなければ当局が許可する筈もなかった。
前へ
次へ
全263ページ中96ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
杉山 萠円 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング