成立する。時間と場所を聴いて、金を払っておきさえすれば、決して間違いはない。
 中には、かような絵葉書屋で、裏二階や何かを利用して待合兼業でやっているのもあると聞いた。
 まだある。

     到る処の怪しい家

 東京市中にある各種のホテル又は宿屋等で、宿屋は宿屋としてチャンと商売していながら、兼業に怪しい男女を泊めるのが大変多い。そんなので通人仲間に名の知れた手堅い? のに泊まって、番頭とか支配人を呼んで頼めば直ぐに電話をかけてくれる。しかし、そんな処へ行くのは、どちらかと云えば平凡な組の通人だそうな。
 まだある。
 東京市の郊外、又は東京市内のちょっとした横町、又は坂道や高台の近くの見晴らしのいい処に、宿屋ともつかず下宿屋ともつかぬ家がよくある。有り体に云えば、同伴客昼夜宿泊所又は仲介業とでも云うべきで、東京市中にいくらあるか知れぬ。夫婦者で、表に「精進上げ」なぞを並べて、二階二間位を使ってコヂンマリやっている式に到っては数限りなかろう。
 但、この程度まで来ると強《あなが》ちに職業婦人に限ったわけでなく、又震災後に限ったわけでもない。昔から東《あずま》にあり来りで、それが最
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