買った絵葉書の主が出て来る。
喰い物や飲みものは出前で取る。火鉢、座布団、その他は、その家から賃借りをする。気の利いた処になると、床の間の掛物、屏風、机、電燈の燭光まで金ずくで、相手が美しいと、総計三十円も奮発すればとても素晴らしい一夜が明かせるという。飽く迄もバラック式の文化式である。
第二職業婦人仲介業いろいろ
この手の商売が絵葉書屋にもある。
記者は東京市中の秘密出版物の景況を探る目的で、絵葉書屋を見当る毎度《たびごと》に飛び込んで、
「男の裸体の絵葉書はないか」
ときいてまわった事がある。その返事は大抵、
「御座いません。その筋が八釜しいので」
という意味のものであった。そこで女の裸体の絵葉書を出していろいろ話していると、秘密画を出して見せるところもあるが、前に説明した高価な美人絵葉書を出して見せるところもある。
大道の美人絵葉書売りと違って、店で売るのは種類が多いのが通例である。
「これは特別のですが、如何様で……」
とニヤリと笑う。人が見ていても、価格さえ聞かねば、普通の絵葉書と変りはないのだから便利である。
気に入ったのがあれば、そこで協商が
前へ
次へ
全263ページ中88ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
杉山 萠円 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング