しかも彼女たちの趣味は、育ちが育ちだけに極めて低級である。大きいか、美しいか、珍らしくさえあればいい。安くて、派手で、ちょっと上等のに見えさえすればいい」
 と。彼女たちは、毎日毎日、この手で誘惑されつづけているのである。

     消えゆく処女美

 彼女たち職業婦人はこうした昔の職業婦人の流れを汲んで、更にそれ以上に文化的な、蠱惑《こわく》的な風俗を作るべく工夫を凝らしている。首のつけ根を剃り上げたり、梳き毛をブラ下げたり、ホツレ毛を描いたりするのは、その苦心の最高潮のあらわれと見るべきである。
 職業婦人の名が二重の職業を意味しているとは、彼女たちのこうした風俗からでも訳なく察せられる。
 彼女たちはこうして処女の美を早くから失って行く。同時に夜ふかしや白粉《おしろい》焼け等が、彼女達の「美」と名づくる資本を奪って行く。そのために彼女達のお化粧は日に増し濃くなり、彼女達の頬紅、口紅は日毎に赤くなり、彼女たちの服装は年毎に若返って行く。哀れと云うも愚かである。
 このような不自然な美しさは、昔では色町やその他の限られた場所でしか見られなかったそうである。それが今では全東京の街頭に
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