人がズングリムックリした、無暗《むやみ》に派手な洋装を尾張大根のような足で運んで行く恰好はあまりよくない。
 おまけに彼女たちはダンスのダの字も知らないのだから、身体《からだ》のこなしが洋服とまるで調和していない。曰《いわ》く何、曰く何と、日本婦人の洋装批難の声はすべての男の批難の的になっている。それでも流行するのは、大方、活動の宣伝がきいているのであろう。

     職業婦人の服装が派手になって行く訳

 職業婦人の服装がどうしてこんなに派手になって行くか。どうしてそんな突飛な流行にまで突きつめて行くか。
 これには大略三つの理由がある。
 第一は彼女達が解放されていることである。彼女たちは金が自由になると同時に、親兄弟の意見を聴かないでも済む権利が出来た。即ち家庭から精神的に解放された。彼女たちは勝手なものを買って、好きに身を飾り得る境遇に這入った。一方、新東京の街頭には、原価の二倍以上の掛け値をした新織物や、新装身具が一パイに並んで彼女達を誘惑しているのである。抜け目のない商人たちはこう考えている。
「今の職業婦人は、今までの日本人の娘としては、真に驚く程の小遣いを持っている。
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