流れ出した。病院、学校、会社、銀行、商店、カフェー、バーは云うに及ばず見受けられる事になった。時勢の進歩の中でも最もハッキリした進歩はこれではあるまいか。

     彼女達はどうして堕落するようになったか

 記者は弁護する。
 彼女達職業婦人は決して初めから二重の職業を持っていたものでないことを。
 同時に記者は確実に予言し得る。
 一度《ひとたび》此《かく》の如く滔々と白昼の街頭に流れ出して、此《かく》の如く公然と官私の仕事に喰い込んだ職業婦人の職業だけを、二度と再び昔の色町や醜業窟に追い込む事が永久に不可能である事を。
 どうしてこんな事になったか……彼女たち職業婦人の大部分が、どうしてかように二重の職業を習い覚えるようになったか。
 只《ただ》この問題一つを研究するだけでも、人間一代を棄てるねうちがあるかも知れぬ。大正十二年九月以降、東京の市中に二重の職業を持つ婦人が激増した。その後に日本国中の婦人の風俗までが影響を受けて大変化を来たしたという事は、社会学上の大きなレコードだから……。
 しかし又一方から見れば、頗《すこぶ》る簡単明瞭である。彼女たち職業婦人の身の上を出来るだ
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