が出来た。これは蠣殻町の取引所界隈にあった高等内侍のスタイルで、千束町式ほど下劣でなく、どちらかと云えば貴婦人好みが多かった。多分はお相手をする相場師連の嗜好から生れたものであろう。これが発達して帝劇美人式となって、現在の貴婦人のスタイルに影響したものかどうか知らぬが、そんな感じがする位である。今の東京に於ける女医、産婆、美容術師等いう年増の職業婦人は、大抵この流れを汲んだスタイルをしているので、駈け出しの刑事なぞにはとても見分けが付かないそうである。
アレは職業婦人!
職業婦人はその服装が如何に立派であっても、どこかに彼女たちの裏面の生活が反映しているものである。彼女たちは金を儲けるために働かなければならぬ。一日のうち何時間かは自己を殺していなければならぬ。その代り、彼女達は又、家庭の女が持ち得ない自由な時間と金を毎日いくらか宛《ずつ》持っている。その時間と金とを彼女たちは勝手気儘に使って、虐《しいた》げられた自己を慰める。これを妨げようとするものがあると、彼女たちは猛然として反抗するのが普通である。そうして益《ますます》勝手気儘になる。ダラシなくなる。ムシャクシャを
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