、リボンで鉢巻をしているのは、希臘《ギリシャ》の巫女の真似であろうか。行衛《ゆくえ》知らずの行衛を半分見せたようなの、蓮の巻き葉のように左右から巻き込んだのなぞ、数え立てれば限りもない。
 その中で最も風変りな二つの流行は、襟足を剃ることと梳《す》きまき毛をブラ下げることである。これは流石《さすが》の福岡でもまだ行われていない。

     襟足を剃る式

 襟足を剃るのは、無論、束髪に限っている。多分、首を長く見せるつもりでもあろうか。剃り上げた首の左右に限って、二本の毛の束がブラ下がっているのを見受けるところから考えると、アヤツリ人形の真似をしたのかとも考えられる。とにかく、首の付け根からボンノクボの上まで、頭のうしろの半分ばかりを、耳の高さと並ぶ位にむごたらしく剃り上げて終《しま》う。そこへ白粉《おしろい》をコテコテと塗るのであるが、大抵は斑《まだら》になった上に、キメが荒いから粟肌《とりはだ》が一面に出来ていて、首の方向を変えると白い皺《しわ》の波が出来る。そのきたないこと。殊に非道《ひど》いのになると、毎日剃らないせいか、黒い毛がプツプツと芽を吹いて、白粉《おしろい》とゴチャ
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