あろう。思えば地震もいろんな揺れ方をしたものである。上下動何寸、水平動何寸という大ゆれのほかに、このような複雑な大震動が交《まじ》っていた事を思えば、東大の地震計が匙《さじ》を投げたのも無理はない。
しかもその震動の影響は、なかなかこれ位のことに止まらないのである。
下層社会の者は、革命と云えば、人殺し泥棒勝手次第という意味に考えるのと同様に、上流社会の人々は、平民的と云えば、不義乱倫自由自在と解釈するのは止むを得ないかも知れぬ。さもなくとも「恋は思案のほか」とやら。
……こんな事で記者の頭は古いと思われては困るから、これ位にして上流社会の堕落記をやめる。
そうして職業婦人の話に移る。
[#改ページ]
職業婦人
職業婦人の真意義
職業婦人!
聞くだに美しく、勇ましい名前である。清い、新しい理想の光りをふり仰いで、一心に働く女性の姿が連想される。
記者はそんな風に考えて東京に来て見た。そうしたらまるで違っていた。
職業を持っている婦人……すなわち稼ぐ女を職業婦人というのなら何でもない。上は女官から女学校の教師、小学校教員、女判任官、女医、女歯科
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