来る純真なもの、生き生きしたもの、又は充実したものを取って喰う商売人が、お互に爪を研ぎ、牙を磨いて、雲霞の如く待ち構えている。否、「東京」は、そのような無残なもののすべてを人格化した「悪魔」の別名である。
 地方から上京した真剣な事業や運動が、東京と名乗る悪魔の乾児《こぶん》たる横道政治家の金儲けの種、高等遊民の飯喰い種として、片っ端から犠牲とされ、腐敗堕落させられて行く有様は、恰も地方から上京する青年処女の純真な志が、東京に入ると忽ち不浄化され、頽廃化させられてしまうのと同様である。否、すべての事は、東京に入って堕落させられなければ、本場を踏んだと云われない。東京の「腐敗」そのもの以上に「腐敗」しなければ、日本第一流と云われないとさえ考えられる。

     日本人に対する東京の不浄な使命

 茲《ここ》に於て、東京の所謂「生存競争」なるものは、事実上、「腐敗堕落競争」である事が容易《たやす》く理解されるであろう。
 学問とても同様である。地方の少年少女は東京を学問の府としてあこがれている。しかし、東京の学校のどこに、地方の学校のような純真なる風が認められるか。
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