無自覚と口巧者そっくりである――。
 ――新しい東京の男のエラサは獣《けもの》のエラサである。その無作法さ、図々しさは、獣《けもの》の不作法さ、図々しさと撰ぶところない――。
 これは記者が作った形容詞ではない。東京人が実地にやって見せている実況である。
 一切の説明を超越した「事実」である。
 この事を報道し、且つ警告したいために、記者はこの筆を執った。
 地方の人々は考えて頂きたい。
 特に東京を吾が日本民族のすべての中心とあおぐ大人諸氏、及び「東京に行きたい東京に行きたい」とあこがれ望む地方の若い人々は、今一度考え直して頂きたい。
 諸君は何故にそんなに東京を尊敬されるか。東京のどこにそんな価値を認められるか。
 東京は事務を執りに行く処という。しかし厳密に云えば、東京は事務を堕落させに行く処と断定すべきである。
 地方から起った神聖な精神的運動、又は真剣な殖産興業等の事業は、それ等が土地で企画されているうちは、まことに真剣で且つ純真であるが、一度東京に持ち込まれると、忽ちその真剣味が抜き取られて、空虚な、不真面目な、汚らわしいものと化せられてしまう。
 東京には、地方から上って
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