を瞭《みは》らした日本人の化の皮は、その首都の名に於て、美事に引っ剥がされてしまったのであった。
彼等東京人の云う忠君愛国、勤倹尚武、仁義道徳は皆虚偽であった。
彼等東京人の持つ外国文化の驚くべき吸収力、その不可思議な消化力、並びにその文化方面の宣伝力……それ等は只一時の上辷りのカブレに過ぎなかった。
彼等東京人は文化民族としての日本人の価値を、真実の意味で代表していたものではなかった。
彼等東京人が真実に模倣し得るものは、只外国文化の堕落した方面のみであった。彼等が本当に持っているものは、唯浅ましい本能だけであった。
東京人は、日本中で先登《せんとう》第一に、アメリカ魂、イギリス魂、独逸《ドイツ》魂、ロシア魂のすべてにカブレて、そのどれにもなり得なかった。只、大和魂をなくしただけであった。そうしてそのあとに、浅薄な意味の文化的プライドに包まれた、低級な本能だけを保有しているに過ぎなかった。だからイザとなると、今までのプライドをなくしてしまって、禽獣の真似をして恥じないのであった。
――新しい東京の女の美しさは鳥の美しさである。その無自覚さと口巧者《くちこうしゃ》さは、鳥の
前へ
次へ
全263ページ中252ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
杉山 萠円 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング