に願いたいので御座いますが……」
 記者はこのほかに二三、田宮夫人からの話をきいて引上げた。
 心から感謝の辞を述べて……。

     不良少女享楽団長

 ××女学校の名は日本中に響いている。畏《かしこ》きあたりの御おぼえ目出度い某名流夫人が創立して以来数十年、今年の某月某日、やんごとなき方々の台臨を仰いだ程の学校である。七百余人のお嬢さんに一定の制服を着せて、頭髪《かみ》の結び方まで八釜しく云っている。設備の完備している事は東都の私立女学校でも有数である。
 その上級生に和田(仮名)という生徒が居る。
 背丈けはあまり高くなく、どちらかと云えば痩ギスで面長である。心持ち眼が下がっているのと、眉毛の細くて長いのが特徴といえば特徴であるが、鼻は尋常である。全体に美人《シャン》という程でもなく不美人《ウンシャン》という程でもない。只平凡な可愛い顔である。
 陸軍中将か何かの未亡人の独り子で、学校の成績は中位、持ち物や髪の結い方等も質素だから、大勢の中に居ると一寸探し出し難い位である。
 しかし、彼女の行動を見ると、不思議に思われる事がいくつも出て来る。
 第一、彼女の顔は極めて平凡で、
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