いる和田(仮名)の事でしょう」
「さあ、名前は同じですが、同じ人間ですかどうですか。私共の仲間では、何故あの女を放校しないのでしょうと云っていますがね」
「ヘエ、そんなに有名なのですか」
「あの女学校で知らぬ生徒は恐らくありますまい。皆名前は云わずに団長団長と云っている位です」
「一体、団長ってどんな仕事をしているのでしょう」
「さあ……何でも中学生や高等学校生徒を誘惑するのが上手だと云いますがね。エー、あと月だったかね(と夫人をかえり見て)、私の学校の生徒の中から二人ばかり連れ出して、或る珈琲店へ這入って、今夜上野で望遠鏡で月を見る会があるからと、いろいろ面白い話をしたそうです。少年は二人共本当にして、誘い合わして行こうとしたのを、一方の親御さんが気付かれて止められたそうですが……上野にそんな会があったかどうか存じませぬが、話上手は事実らしいのです」
「ヘエ、先生はよく詳しく御存じですな……」
と云いさして、これは失礼と思ったが、果して田宮氏は赤面した。
「ハイ……その、実は私の同窓がその女学校におりますので……実は貴方の御職業を信じてお話し致しますわけで御座いますが……必ず御内分
前へ
次へ
全263ページ中244ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
杉山 萠円 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング