もし一人が失敗と見たら、ほかの団友に渡す。こうして前後二段に攻め立てると、そこは人間の浅ましさで、大抵固い少年でも自惚《うぬぼ》れが出て来る。これが油断の始まりで、つい気がうきうきして、第二の女学生の手段に引入られて見たくなる。
 又、第一の少女「何子さんの友より」とか何とか書いて、第二の少女から手紙を出すのがある。
「あなたのために何子さんは病気におなりになりました。どうぞ助けると思って……」
 但、ここまで来るのはよほど手強いので、もっともっと手軽いのが最近の東京では普通だという。
 往来で知らぬ少女に名刺を突つけて結婚を申込む男……又は見も知らぬ男に、
「あなたの理想の御婦人はどんなのでしょうか。参考のために是非お知らせ下さいませ」
 と手紙を出す少女が居るという位だから……。

     匙《さじ》を投げかけた記者

 東京はこんな風に、大人の享楽主義の天国であるように、少年少女の花の都である。
 牛込の神楽坂、渋谷の道玄坂、神田の神保町付近、本郷の湯島天神あたりの夜は、今でもそんな気分の「淀み」を作っている。
 そうして、そんな処を摺り鉢の縁《ふち》とすると、底に当るのが銀座
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