かと云えば見分けにくい方だそうな。
 不良少年で一番多いのは矢張り学生で、その次が会社員、ボーイ、活弁、俳優、苦学生の順らしい。巡査も居ると云った番頭さんがあったのには驚いた。
 ――持って来た少女の着物の襟に、その巡査の手紙が縫い込んであったのでわかったんです。尤も初手からあの巡査は不良だという評判がありましたが、相手の少女がそこまでレターを秘密にしていようとは、流石《さすが》商売柄のお巡りさんも気が付かなかったんでしょう――。
 記者はそれ以来、この頃の東京の巡査に若いのが無暗に殖えて来るのが気になり出した。交番の前に立っている、色の白い若いのを見ると、ちょっと顔を見て行く癖が付いた。
 いずれにしても、真面目に働きながら不良性を発揮するのが殖えて来た事は事実であるという。
 近代文化の裡面に於ける一つの重大な特徴である。

     不良少女団の草分時代

 次は不良少女の番である。
 不良少女に就ては誠に貧弱な材料しか得られなかった。何しろ震災後急速の発達を遂げて、やっと三百人の名をブラックリストに並べただけで、その団体も鞏固《きょうこ》なのはすくなく、仕事ぶりも不良少年のそれ
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