―それを軽々と撰り好みして、その上に踊り、歌い、遊戯し、口笛を吹き、笑い、泣き、怒りして行くのが新しい少女である。自分の心にかかるすべての重み――物質の威力、道徳の権威、良心の束縛を下界はるかにふり棄てて、空中に吹き散る紙のように、気楽に、面白くひるがえって行きたいのがモダンガールである。
 そんなところまで飛び上って彼女を捕え得るもの、又は相手になって導き得るものは、唯不良少年ばかりである。地上の「面目」や「生活」に釘付けにされている親達や教育家は、只アレヨアレヨと騒ぐばかりである。

     巡査の少女誘惑

 不良少年といっても、皆が皆、懐手でブラブラしているわけではない。事実何もしないのでも、学生風か何かで真面目腐っている。殊にこの頃は堂々たる官立の学生に不良が殖えたという。
 不良少年の職業は、警視庁や、その他市内の各署で昨年の冬まで捕まったのが統計に出来ているとかきいたが、その方は調べ得なかった。その代り、質屋さんが商売柄よく知っていることがわかった。
 尤も質屋さんは、「不良」ばかりでない、泥棒、スリ、そのほか何でも見わけなければならぬ商売であるが、不良も同様で、どちら
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