疼《うず》いている――。
 ――宗教でもいい――小説でもいい――音楽でもいい――空想の人格――実在の人――何でもいい――。
 ――何でも自分を突いてくれるものを待っている――。
 ――その証拠には、彼女たちに与える手紙や言葉に「神様」という文句を使うと素敵に利くという……。
 可愛相なのは迷い悩める現代の少女である。
 彼女たちは解放を望む羊の群である。柵外がことごとく狼の世界である事を知らない、憐なる羊の群である。

     刹那刹那の気分

 解放を望む少女は、特に刹那刹那の気分に動かされ易い。
「試験中ですけど構いませぬ。学校の一年よりも、あなたと話す一分間の方がどれ位貴いか」
 なぞいう言葉が、どれ位そんな少女を動かすか。
「今夜、活動を見ているうちに、何だか急につまらなくなって、下宿へ帰ってこの手紙を書きます。何故という事はありません。この手紙を書いている間だけは、自分が生きているような気持ちがするからです」
 といったような書き方が、素敵に相手を動かすという。
 そんな風に感じ易い気持ち――刹那的の軽い、しかし鋭い情感、感興、主観等の変化のつながりに生きて行きたい気持ち―
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