の項に記載した通りである。
 最近では、こうして交際をして関係をつけると、あとはあんまり深入りしない。只、相手の少女から来た手紙や貰ったハンケチなどを飽く迄も大切にして、脅迫の役に立てる。その少女が夢中にでもなって来れば、いよいよ証拠物件がふえるだけで、「不良」の方でも、そうした目的以外に深入りを望まぬ傾向が出来たという。
 こうして不良少年少女のやり口は、だんだん凄くなる一方である。

     緑色の平面に静止する象牙の玉

 不良上りの或る会社員は云う。
 ――彼等善良なる少女が堕落しない第一の原因は、不良少年に対する恐怖心で、第二は羞恥心である。これは最初の取かかりに気をつけて、その少女の気位にふさわしい気位を以てあしらえば、信用を得るのはあまり困難でない。あとには羞恥心が残るが、これはジリジリと挑発すれば消え失せてしまう――。
 ――恐怖心と羞恥心を除いた少女の心は、玉突台の羅紗の上に静止している象牙の玉のようなものである。表面は品よく静かにしていながら、内心はどちらかへ転がりたさに悩んでいる。何物かを崇拝したい。たよりすがりたい。迷い込んで夢中になりたいという気持ちでいたみ
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