う。
 彼等はおしまいにどうなるのでしょうと、その巡査に尋ねたら、
「さあ、よくわかりません。誘拐されて……と云っても、別に誘拐という程の意味もありませんが、つまり拾われて、労働者や乞食の手伝いになるか、顔立ちのいい物は見世物師に連れて行かれるなぞは出世の方でしょう。それもタマにあるので、大抵は立ちん坊か乞食にでもなるのでしょう。病気で死ぬのは滅多にありませんが……」
 と淋しく笑った。

     人間苦を知らぬ哀れ

 浅草公園内のチンピラは、よく不良少年の手先になって手紙なぞのお使いに遣られる。
 しかし彼等は頭が単純だから、複雑な用事は出来ない。お使いの出来る範囲も大抵は浅草界隈に限られているので、遠方でもお使賃《つかいちん》欲しさに頼まれはするが、当てにならぬという。又、彼等は割りに正直で、何でも包み隠しをしないのが多いので、返事の要る手紙なぞを持たせると危険だそうである。
 彼等は又、醜業婦とその情夫の間の文使《ふみづかい》もやる。こっちは不良少年のようにスッポカシを喰わするような事はなく、きっといいお使賃を呉れるので、彼等はどこの伯母さん、ここの伯父さんと尊敬している。

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