時に彼等のプライドも高くなったし、要求の金高も多額になった。やり口もこれに随《したが》って冴えて来たという。
 こんな風に発達しておったら、米国式の黒手《ブラックハンド》が出来るのも遠くあるまい。
「他人の親切を無暗《むやみ》に受けるな。連れにはぐれたら、すぐに自宅へ帰れ」
 という注意を、これからの活動を見に行く少女にくれぐれ云いきかせてもらいたいと或る刑事は云った。
 最後に、彼等の中で下等なのになると、公園内の悪少年《チンピラ》を使って物を掻っ払わせて、喰物やお金と取換えてやるのがある。
 ところで面白いのはこの浅草のチンピラである。

     浅草公園内のチンピラ

 浅草公園内のチンピラは一種独特のものである。ユーゴーの小説に、「町の子」と名づけられた宿なし少年が出て来るが、あんなたちのもので、九段下の公園、芝の増上寺、それから昔の新橋(今の汐留)駅前の塵埃溜場《ごみためば》なぞによく居た。
 まだほかにも居たであろうが記憶しない。その中でも浅草のが一番眼に立つし、多くもあるので、よく人が気が付いている。要するに大東京の産物――否、大都会特有のもので、自身、不良だか何だか…
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