手と同様の云いがかりを作ってパクルと云うから恐ろしい。気の弱いものは浅草の活動を見に行けなくなる。
 又、ある一人はカフェーに這入って網を張る。お坊ちゃん式の学生が這入って来ると、待ち構えて話しかける。相手が煙草でも吸っていれば一層妙である。

     君はまだ禁止物を見ないでしょう

「君、活動を見に来たんでしょう。浅草でも普通の活動は駄目ですよ。秘密に営業している禁止物を見たまえ。それあ面白いですよ。僕はそこの技師を知っていますから、映写室から見せてあげましょう」
 なぞと連れ出す。
 それから、道筋を記憶出来ないように大急ぎでグルグルと引っ張りまわして、裏口からヒョイと自分の根城に連れ込む。
 そこで脅迫して、金や時計をふんだくっただけで帰せば、大抵の坊ちゃんは秘密を守るそうであるが、タチの悪いのに引っかかると、自宅に電話をかけて金を持って来させる。
 それも、バットの空箱に入れてどこの石の上に捨てろの、どこのカフェーの鏡の前のテーブルで渡せなぞいうのは、古い上に危険が多い。最新式のは、囮《おとり》の少年に手紙を書かせて、自身にその家を夜中にたたき起す。
「この手紙を受け取って
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