や色彩は、そんなに別嬪《べっぴん》でなくとも挑発的に見える化粧法や表情法を、到る処に鼓吹している。
 そんな研究に浮身を窶《やつ》しているうちに、彼女たちは自分の持っている性の強さ、魅力を知るようになる。又は、女の弱身をそのまま男性に対する強みにする方法を飲み込むようになる。
 これが堕落の初め終りである。
 芝居や実世間のバムパイヤになれる唯一の大道である。
 女学生なら、先生に泣き付いて出欠を胡麻化《ごまか》す。色仕掛で落第を喰い止める。職業婦人だと、会計を軟化させて前借をして逃げる。重役の令息の新夫人に脅迫状を送る……なぞいうのがいくらも暗《やみ》から暗《やみ》へ葬られている。新聞に出ているのはその一部分である。

     泥棒の手習い場

 一方、本物の不良少年も、異性を引っかけるばかりでない。泥棒、詐欺、脅迫なぞいろいろやる。そうしてこの種類になると、極《ごく》軽いのでも本物の不良としてお上《かみ》から睨まれるのである。男女関係のそれのようにありふれていないからでもあろうか。東京市中はこんなあらゆる種類の「不良養成所」である。殊に現在のバラック街はそうである。
 震災後急増
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