教育方針は、真実に近代思想を理解して、指導的に女性解放をやっているように見えない。反対に、人気取りのためにお嬢さん方の希望と迎合しているかのように見える。だからその結果は、無意味な虚栄奨励、見栄坊許可という事実に堕ちている。
 その結果、彼女達仲間の嫉妬心や羨望心を増長させている。手癖の悪い娘が出来たり、虚栄のために身を持ち崩すお嬢さんが出来たりしている。
 その証拠は新聞の軟派の雑報を見るがいい。又は警察に行って聞いて見るがいい。

     自惚《うぬぼ》れから堕落へ

 少女の堕落の今一つは、矢張り近代思想の誤解から始まって享楽主義に落ちる事である。この世は無意味である。只、享楽だけがある。人生は零である。只、刹那の感興だけしかない。これに対して人間は絶対に自由でなければならぬ……といったような思想を、極めて低級な意味に考えて実行する。
 実は、うぬぼれていい――堕落して構わない――と考えて堕落した事になる。
 今の東京はうぬぼれの大競争場である。あらゆるおめかしの大品評会場である。大抵の風姿《なり》をしても驚かぬ程、その競争は激烈である。
 活動役者の表情の技巧や、近代芸術の線
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