いる。
ところが、東京で出来た知り合いの中に不良らしいのは一人も居ない。同時にその友達の中に、この偉大な大都会を物とも思わぬ少年少女があって、面白く親切にいろんな事を教えてくれるのが居る。そんな友達の話を聞いていると、何でも東京でなければならぬように思われて来る。つい感心して夢中になってつき合っている中《うち》に、今まで悪いと思っていた事がいつの間にか悪いと思えなくなる。
殊に東京でエライと云われる大人は、白昼堂々とそんな事をやっている。それが最新式だの、文明式だのと持てはやされている。そんなのを見たり、真似たりして、天晴れ東京通になって、田舎者を馬鹿にしている時は、もう平気で「不良」をやっている時である。「自分の不良性」が「東京の不良性」と共鳴して、自分を不良化してしまっている時である。
この時に自覚しても最早《もう》遅い。
友達を怨んでも、東京を呪っても追付かぬ。学校は追い出されている。故郷《くに》からの送金は絶えている。イヤでも不良かゴロに仲間入りしなければやり切れなくなっている。
いよいよ不良が上達する。
生存競争の邪道に陥る。
……といったような順序である。
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