女の不良気分」が、歩き方に反映したものと思う。職業婦人のだともっと硬《こわ》ばるか、ゾンザイに見えるかして、どちらかと云えば男性化した気分があらわれている。
 あれが不良少女と、記者に指さし示された女学生は、一人を除いたあと全部が、この特徴を持ったあるき方をしていた。股《また》をすぼめて恥かし気に歩いて、処女を気取る不良少女は一人も居なかった。

     東京の土を踏んでドキドキと躍る心

 大正十二年の秋以後、東京は特に夥しい人間を吸収した。その中にまじる少年少女は片端から不良化した。そうして本物の不良をドシドシ殖やした。
 その順序を考えて見ることは、この稿の最重要な使命の一つと思う。
 第一、田舎から出て来た少年少女は、永らく東京に住んでいる家庭の子女より堕落し易いというが、さもありそうに思われる。
 少々惨酷な云い方ではあるが、しっかりした身よりがあって東京に来たのは別として、只|無暗《むやみ》に東京にあこがれて吾家《うち》を飛び出したりするのは、東京に着かぬ前から不良性を帯びていると云っていい。田舎を嫌ったり、窮屈がったりして飛び出した気持ちには、既に不良性の種子《たね》が
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