何かに、
「本当の悪魔は平凡な人間に見える」
 とあるが、事実かも知れぬ。とにかく、普通の少女と不良少女の区別は出来ないと云った方が早わかりである。
 唯ここに一つだけ、殆ど不良少女に限られた特徴がある。それは足の運び方である。それも、和服に袴《はかま》で靴を穿いている場合に限って見分けられる位、微妙なものである。
 不良少女が行くのをうしろから見ると、所謂「内がま」とも「外がま」とも付かぬ。それかといって真直《まっすぐ》でもない。心持ち爪先が外を向いたり、内を向いたり、一足毎に一定せぬ。
 又、踵を卸《おろ》して次に爪先を地に付ける時、何となくパタリとして力無く見える。普通の少女だと、往来をあるく時は多少に拘らず緊張しているから、爪先を先につけるか、又は爪先と踵を同時に落すところである。
 不良少女のはその腰から股《もも》のあたりにも緊張味がなく、膝の関節の曲り加減が、急ぐともなく、ゆっくりするともなく見える。注意して見ると、サッサとあるく時にもこの気持ちがある。要するに、腰から下の三段の関節に一種の締りが抜けた歩き方と云えば、あらかたわかると思う。
 これは、「普通の家庭に育った少
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