び下さいませ。
また後便でゆっくり申し上げます。
[#ここで字下げ終わり]
[#地から1字上げ]小夜なら  つる子
 私の兄さまへ
   ……………………
 この少女の悩みは、前の哲学的なのに比べて感傷的である。「私達の若さに同情してくれる人はない」の一句はことに強い感銘をあたえる。現代のあらゆる教育は、少年少女の若さにすこしも同情をしていない。只|無暗《むやみ》に押さえ付けようとするか、ほったらかしておくか、二つの間を出《い》でぬ手段を執るのみで、動《やや》もすれば彼等子女を罪人扱いにして、自分達の誠意の足らぬ事を考えまいとする。彼等の青春に同情する不良芸術、不良人間の魅力の方が、教育の力よりもはるかに強いのは無理もない。「私達の若さに同情してくれる人がない」という言葉は、無能な現代教育の心臓を刺す短剣である。

     少女のラブレター(六)

   ……………………
[#ここから1字下げ]
略――
この前差し上げましたレター御覧になりまして?
――さぞお笑いなすった事と思いますわ。だって、何度レターを差し上げても御返事がないから、もしや発見されたのじゃないかと思いまして、逃れる
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