でも、あなたは御元気がなく、お言葉さえかけて下さらないのでした……で、悲しゅう御座いましたの。ですから忘れて下さいませんようにと[#「忘れて下さいませんようにと」に白丸傍点]書きますわ。その後お体はつづいておよろしいの?
今日は何だか心細くてなりませんの。
先達《せんだっ》てのレターに、姉の来ていますことを申上げましたために、あなたは御遠慮遊ばしていらっしゃるのじゃなくって? 御心配には及びませんわ。あなたからのお便りのない日は、私は寂しくてなりませんのよ。ですから、早くお便りをお恵み下さいませ。
病の床に是非なく伏しておりましたけれど、私はたまらなくなって………。
呪われた東京を思い出して……今はこの書く手もふるえて、この窓から見れば――赤い血のような無数の星の流れ、空一面に気味悪くそまって。
真紅のほのおの高く高く息づくのを! 恐ろしい……そうして、人々のどよめきの中を依然として星は乱れ飛ぶ! 鐘は鳴る! おお、今は午前三時よ! 床をぬけ出たためか、風邪の復活! ほん当に悲しゅうございます……お願いですからお便りを! 病の床に伏す身は! 遠い都にいますあなたを思い出しては……おしの
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