…それは全く私の方が嘘つきなのよ。御免なさい。
私もあの日は朝から気分が悪くて寝ていましたの。三日間会社を休んで、月曜から床の中で暮しました。けれど床の中で何事も忘れて、真琴ちゃんのタメに祈りましたの。今度の試験は成績良好でしょうよ。三日も会社を休んで祈っていますもの? こんな思いをしているのに、真琴ちゃんは一人音楽をのん気なかおして聞いているなんて、ほんとにあんまりと、プリプリ内心怒っておりましたの。でもレター拝見して、やっと胸が落ちつきましたわ。二十一日にきっと行きますわ。それまでは苦しみね。でも今日は十六日でしょう。後五日すぎれば御逢いできるのね。試験がすむと、後はしばらくお休みでしょう。そうなると真琴さんがうらやましくなってしまいますわ……。
御休みになったら、御都合のよい時に春の海……ほんとうに行きましょう。どこがいいでしょう、よろしく願います。
真琴さん。いつも御無沙汰ばかりして済みません。決して忘れているのでは御座いませんのよ。一時だって忘れやしませんわ。けれど悪筆の筆不精故、悪いとは思いながらついサボってしまいますのよ。御免なさい。さらば。
[#ここで字下げ終わり]

前へ 次へ
全263ページ中156ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
杉山 萠円 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング